犬を飼った多くの飼い主さんがまず悩むのがしつけのことではないでしょうか。
「犬のしつけは何から始めればいい?」「犬のしつけはいつから必要?」「そもそも犬にしつけをしないといけないの?」など、さまざまな疑問が浮かんでくるでしょう。
犬が人間と共同生活していくにはしつけが必要不可欠です。
しつけがうまくできていると、犬も人もストレスが少なく過ごすことができ、共同生活を楽しむことができます。
しかし、しつけで飼い主が注意すべきポイントや、トレーニング方法を誤ると、いつまでたってもしつけができなかったり、問題行動に繋がったりする場合もあります。
そこで、本記事では犬にとってしつけが重要な理由、犬に必要なしつけの内容、犬のしつけ方のポイント、しつけの注意点、実践的なトレーニング方法などを詳しくご紹介していきます。
犬と人が良好な関係を築くためには正しくしつけを行うことが大切です。ぜひ本記事を参考にして、楽しみながら愛犬のしつけを行ってみてください。
監修者 獣医師 丸田香緒里(まるた かおり)日本大学獣医学科卒。動物病院勤務後、飼い主様にもっと近い存在の獣医師になりたいと思い「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーに、アニマルライフパートナー設立。 獣医中医師、ペット栄養管理士などの資格を生かし、シニアケアや飼い主の心のケアにより力を入れた往診診療(神奈川県藤沢市及び近郊)のほか、企業顧問、製品開発など活動は多岐にわたる。往診獣医師協会代表理事、女性獣医師ネットワーク理事を務める。著書に『犬のいる暮らし一生パートナーでいるために知っておきたいこと』(池田書店)。 |
犬にしつけが必要な理由
そもそも何故、犬にしつけが必要なのでしょうか?
理由の一つは、犬の安全を守るためです。
適切なしつけができていないと、災害時など愛犬の身に危険が迫っている時に制御することができず、愛犬がケガをしてしまう可能性が高まります。
そのほか、散歩中に人にとびかかる、他の犬に噛みつくなどのトラブルを起こし、周囲の人に迷惑をかけてしまう可能性も高くなります。
このような理由から犬が人間と快適に共生していくためには、しつけが欠かせないのです。
犬のしつけはいつから必要?何歳までしつけが可能?
犬のしつけは何歳までに済ませておかなければならないといった期限は特にありません。
ただし、成犬になるにつれ、しつけに時間がかかるようになるので、アイコンタクト、トイレトレーニング、噛んだり吠えたりしないようにするしつけなどの基本的なことは子犬のうちにしつけておいたほうが良いでしょう。
特に生後3~16週間までの「社会化期」に外の刺激に慣れさせることは大切で、この時期に引きこもって過ごすと、知らないものに対して恐怖心を持つようになり、噛みつきや無駄吠えなどの問題行動を起こしがちになります。
成犬になってからも「社会化」は可能ですが、時間と根気が必要です。
できる限り、子犬の時期から「社会化トレーニング」を行いましょう。
犬の「社会化」とは、さまざまな人、動物、物などの刺激に慣れさせること。
子犬のうちから外の音を聞かせたり、抱っこやカートで外に連れ出したりして、外の環境に少しずつ慣れさせていきましょう(3回目の混合ワクチン接種から1~2週間経ったら地面に下ろして大丈夫です)。
また、子犬のうちから体を触られることに慣れさせることも大切です。
体を触られるのを嫌がらなくなれば、毎日のお手入れや病院での診察がスムーズになります。
愛犬がリラックスしている時に、首や胸などの触ると喜ぶ場所からなでて、嫌がらないようなら、全身をやさしくなでてあげてください。
愛犬が体を触られるのを嫌がる場合は、人の手を怖がっている状態なので、以下の恐怖心をなくすトレーニングを行うと良いでしょう。
<人の手に対する恐怖心をなくすトレーニング>
- 手のひらにフードを置き、ゆっくり手を動かしながらフードをあげる
- すばやく手を動かしながらフードをあげる
- 犬が嫌がらない頭や背中などを手の甲でなでる
- おとなしくしていられたら、褒めてご褒美を与える
効果的な犬のしつけの順番
犬のしつけの順番は明確に決まっているわけではありませんが、優先的に覚えさせたほうが良いしつけはいくつかあります。
ここでは、しつけがスムーズに進みやすくなる効果的なしつけの順番について解説していきます。
名前の学習とアイコンタクト
犬にとって大切なしつけの中でも、最初に行うべきは名前を覚えさせることと、アイコンタクトをとれるようにすることです。
犬が自分の名前を覚え、飼い主とアイコンタクトをとれるようになると、他のしつけを覚えさせやすくなります。
犬に名前を覚えさせるしつけの方法
- 犬がこちらに向かってくるタイミングで名前を呼ぶ
- おやつの匂いを嗅がせて、犬が振り向いた時にすかさず名前を呼ぶ
- 1、2ができるようになったら、犬の背後から名前を呼ぶ。振り向いたらほめながらおやつを与える
犬にアイコンタクトを覚えさせるしつけの方法
- おやつを握った手を犬の鼻先に近づける
- おやつを握った手を自分のあごの近くまで持ち上げる
- 犬がおやつを目で追い、顔を上げたタイミングで名前を呼ぶ
- 犬と目が合ったら、すぐにおやつをあげながら褒める
このトレーニングは名前を呼ぶだけでアイコンタクトが取れるようになるまで何度も続けましょう。
指示語(コマンド)トレーニング
名前を覚えさせて、アイコンタクトもとれるようになったら、次に取り組みたいのは「指示語トレーニング」です。
指示語トレーニングとは、犬の興奮を落ち着かせたり、危険を回避したりするのに役立つ動作を「おすわり」や「待て」などの言葉と結び付けて覚えさせるトレーニングです。
1.「おすわり」
おすわりをすると犬は気持ちを落ち着かせることができます。
犬は興奮することで吠える、飛びつくなどの問題行動を起こしがちになるので、愛犬が興奮しすぎていると感じたら、「おすわり」の指示を出してください。
犬に「おすわり」を覚えさせるしつけの方法
- おやつを握った手を犬の鼻先から頭の上のほうに向かって動かし、犬が顔を上げるように誘導します。
- 顔が上向きになると自然にお尻が床に着き、おすわりの姿勢になります。犬が座った瞬間に「おすわり」と声をかけます。
- 座った状態をキープしている時にご褒美のおやつを与えます。
「おすわり」の声だけで座るようになるまで、繰り返し、しつけを行いましょう。
2.「ふせ」
ドッグカフェなどで愛犬を少し長く待たせるときに便利なのが「ふせ」の指示語です。
お尻とお腹を地面にくっつけ、リラックスした状態で愛犬を待たせることができます。
犬に「ふせ」を覚えさせるしつけの方法
- おやつを握った手を嗅がせておすわりのポーズをさせます
- おやつを握った手を犬の鼻先に近づけたまま、手を真下に下ろして顔を下げさせます
- 自然に伏せた姿勢になるので、すかさず「ふせ」と声をかけ、おやつをあげます
- たくさん褒めて、「ふせをすると良いことがある」と覚えさせます
3.「待て」と「おいで」
愛犬の衝動的な動きを止めたい時に有効な「待て」と、逃走時などに愛犬を呼び戻すことができる「おいで」も早めにおぼえさせておきたい指示語(コマンド)です。
犬に「待て」と「おいで」を覚えさせるしつけの方法
- おやつを握った手を嗅がせて犬に上を向かせ、「おすわり」のポーズをさせます。
- おやつを見せながら「待て」と声をかけ、犬のいるところから一歩後ろに下がります。
- 犬が動かなかったら、褒めながらおやつで呼び寄せます。
- 犬がこちらに向かってきた瞬間に「おいで」と声をかけます。
4.「よし」
「待て」などの指示を出した後、その状態を解除する指示語として覚える必要があるのが「よし」です。
犬に何か指示を出した後は「よし」と声をかけ、「もう自由にしていいよ」と教えてあげましょう。
犬に「よし」を覚えさせるしつけの方法
- 愛犬が好きなおもちゃを見せて「待て」と声をかける(犬が動いてしまったらやり直す)
- ちゃんと待つことができたら「よし」と言葉をかけて、おもちゃで遊んであげる
5.「ハウス」
「ハウス」という指示語を使って愛犬をクレート、サークル、ケージなどのハウスに誘導するトレーニングも、とても重要です。
愛犬をクレートに慣れさせておくと、災害時などにスムーズに一緒に避難することができます。
また、普段の生活でも愛犬を動物病院やペットサロンに連れ出せるほか、安全なクレートの中でお留守番させて出かけることも可能になります。
犬に「ハウス」を覚えさせるしつけの方法
- おやつの匂いを犬に嗅がせてから、ハウスの奥におやつを置く
- 犬がおやつを食べるためにハウスの中に入った瞬間に「ハウス」と声をかける
- 犬がおやつに夢中になっている間にハウスの扉をそっと閉める
- 2~3秒ほどたったら、扉を開けて犬を褒める
トレーニングを行うたびに扉を閉める時間を少しずつ伸ばしていき、ハウスに慣れさせてください。
6.「お手」
「お手」はこれまでにご紹介した指示語に比べると重要度は低いですが、おぼえておくとメリットがある指示語です。
お手に慣れると爪切りなどのお手入れが行いやすくなるほか、様々な人とコミュニケーションを取る良いきっかけになります。
犬に「お手」を覚えさせるしつけの方法
- 愛犬を「おすわり」の状態にさせる
- 犬の右の前足をやさしく持ち上げて、飼い主の手のひらにのせ、「お手」と声に出して伝える
- そのままの状態を5秒ほどキープする。キープできたらしっかりと褒めたり、ご褒美のおやつを与えたりする。
以上が優先的に覚えさせたい指示語です。
指示語トレーニングは環境が変わるとできなくなることも多いので、さまざまな環境で練習してみてください。
吠える犬に効果的なしつけ方
犬が吠えるのは本能です。
かつて群れで暮らしていた犬は、吠えることで仲間に気持ちを伝えたり、危険を知らせたりしていました。
つまり犬にとって吠えることは自然なことで、まったく悪気はないのです。
とはいえ、犬と人が共に暮らす時には、むやみに吠えられては困ってしまいますよね。近所迷惑になるし、周囲の人を驚かせてしまいます。
愛犬の吠え癖に悩んでいる人は、以下のような対処法を行うと良いでしょう。
犬が何かを要求して吠えている場合
愛犬が何かを要求して吠えている時には無視をするのが一番です。
吠えた直後にかまったり、おやつをあげたりすると、愛犬は「吠えた結果、いいことがあった」と学習して、ますます吠えるようになります。
このような悪循環を断ち切るためには、愛犬が吠えている間は無視を続け、吠えるのをやめたら「おりこうだね」などと言って褒めてあげると良いでしょう。
心が痛むかもしれませんが、愛犬が吠えても徹底して無視し続け、愛犬に「吠えても何もいいことが起きない」と学習させることが大切です。
犬が玄関チャイムに反応して吠える場合
玄関のチャイム音が鳴るたびに愛犬が吠えて困っている人も多いようです。
何故吠えるのかというと、「玄関チャイム音=怪しい侵入者がやってくる」と認識しているため、ほえて追い払おうとしているのです。
この場合は、録音したチャイム音を流し続けて、チャイムの音に慣れさせる方法が有効です。
そのほか、チャイムが鳴ったら愛犬が吠える前に、すばやくおやつを与えて注意をひきつけるというやり方もあります。
この方法を行うとき注意したいのは、必ず愛犬が吠える前におやつを与えること。
吠えた後におやつを与えると、吠えたことに対するご褒美と認識されてしまい、もっと吠えるようになります。
来客を部屋に通す必要がある時など、愛犬をクレートに入れておきたい場合は、クレートにおやつをまいて、クレートに誘導しても良いでしょう。
愛犬がクレートに入ったら扉を締め、落ち着かせるために布をかけて目隠しをします。
何度も繰り返せば、チャイムが鳴っただけで、自分からクレートに入るようになっていくはずです。
お散歩中にすれ違う人や他の犬に吠える場合
愛犬がお散歩中にすれ違う人や他の犬に吠えてしまう場合は、落ち着かせることが大切です。
具体的には次のように対処すると良いでしょう。
- 他の犬を飼い主が見つけたら、すれ違う前に愛犬におやつを与えます。
- 愛犬がおやつに集中して、吠えずにすれ違うことができたら大いに褒めてあげます。
この流れを繰り返すと、愛犬は人や犬とすれ違った時に吠えなくなります。
噛む犬に効果的なしつけ方
愛犬の噛み癖に悩んでいる方は、こちらの記事を参考になさってください。詳しく解説しています。
【獣医師監修】犬の噛み癖に悩んでいる方必見!犬が噛む理由としつけ方について解説
犬のトイレのしつけ方
愛犬のトイレのしつけ方に悩んでいる方は、こちらの記事を参考になさってください。詳しく解説しています。
【獣医師監修】簡単にできる!犬のトイレのしつけかた 成犬でも大丈夫
犬のしつけのポイント
犬のしつけを行う際にはいくつかのポイントがあります。
以下のことを意識すると、スムーズにしつけを行えるでしょう。
ほめてしつけよう
しつけをする際には、愛犬が望ましい行動をとった時にしっかりと褒めて、その行動を覚えさせることが大切です。
愛犬は飼い主から褒められることが嬉しくて、褒められた時の行動を繰り返すようになります。
犬は目の前の出来事と過去の出来事を結び付けて覚えることはできないので、褒める時は、望ましい行動の直後に褒めることが大切です。
いいことができたら、すかさず「グッド!」「いい子!」などと声をかけてあげましょう。
その際に愛犬の名前も一緒に呼んであげると、「名前=褒められる」と理解して、自分の名前を好きになります。
指示語トレーニングは焦らず、毎日少しずつ行おう
「おすわり」、「待て」などの指示語トレーニングには集中力が必要なので、トレーニング1回あたりにかける時間は5~10分程度にしておきましょう。
愛犬があくびを始めたり、鼻の頭をなめたりといった「飽きているサイン」が見られたら、トレーニングは切り上げてください。
トレーニングは焦らず、ゲーム感覚で楽しみながら行うほうが効果的です。
犬のしつけにはおやつを有効活用して
犬をしつけるときには「おやつ」を上手に使うと効果的です。
愛犬を褒める時におやつをあげると、「良いことをしたらご褒美がもらえる」ことを学習し、やる気がアップします。
愛犬が飽きないように、おやつはバリエーションをもたせると良いでしょう。
新しいことを教える時や、愛犬が苦手な場所でしつけをする時は、スペシャルなおやつをあげてください。
おやつの適量は1日の給与カロリーに対して10%程度です。
おやつをあげる場合は、その分フードの量を減らして、カロリーをとりすぎないようにしてください。
低カロリーのおやつを活用するのがおすすめです。
おやつがない時は、愛犬の好きな遊びをすることや、褒めることをご褒美にするのも良いでしょう。
ただし、褒めるときに思いっきりなでるのは嫌がる犬もいます。しつけの後に愛犬が嫌がっていることをすると、指示に従わなくなってしまうので注意してください。
愛犬をなでる時はゆっくり、優しく、様子を見ながらなでてあげてください。
犬のしつけの注意点
ここでは、犬のしつけの中でも、やってはいけない注意点について解説します。
犬をしつけで叩くのはNG!
愛犬を叩く、殴る、蹴るなどの体罰で無理やり従わせようとすることは絶対にやめてください。
愛犬に精神的ダメージを与え、問題行動を引き起したり、不信感から飼い主に反抗的な態度をとったりするようになる可能性があります。
おしおきでクレートに閉じ込めるのはNG!
愛犬が言うことを聞かなかった時、おしおきとしてクレートに閉じ込める人もいるようですが、そのような行為は絶対にやめてください。
クレートは愛犬に「ここは安心できる」と認識してもらう必要がある場所です。
愛犬がクレートの中で落ち着けるようになったら、愛犬を留守番させる時や、病院やトリミングサロンに行く時におとなしく中で待っていてもらうことができます。
クレートの中に閉じ込めると愛犬がクレート嫌いになってしまうので、おしおきに使うのは厳禁です。
犬のしつけ教室やドッグトレーナーに任せっきりにするのはNG!
愛犬のしつけがうまくいかなくて悩んだら、犬のしつけ教室などに通って専門家の力を借りるのも良いでしょう。
ただし、しつけ教室に通ってしつけができても、卒業するとすぐに言うことを聞かなくなる犬もいます。
そのため、しつけ教室やドッグトレーナーに任せっきりにせず、飼い主も一緒に勉強することが大切です。
経験豊富なドッグトレーナーが飼い主へのレクチャーもしっかり行ってくれる教室を選びましょう。
まとめ
しつけには飼い主と犬の信頼関係が必要です。
犬は信頼する人の言うことをよく聞きます。
どういう人を信頼するかというと、犬の気持ちに寄り添ってくれて、褒めてやる気を引き出してくれて、悪いことをしていたら「こういう時はこうすればいいんだよ」と正しいやり方をわかりやすく教えてくれる人です。
一方的に犬に言うことを聞かせる主従関係ではなく、親子のような温かい関係性を保ちながら、しつけを行うと良いでしょう。
しつけがしっかりできていると犬も飼い主も快適に過ごすことができます。
しつけには根気が必要ですが、前向きにがんばってみてください。
監修/獣医師 丸田香緒里(アニマルライフパートナー院長) |
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