時折横切るキツネや鹿に気をつけながら牧場に入ると、馬の獣医師の先生の往診者とすれ違います。入れ替わりで私が診察するのは馬ではなく、そこにいる猫たち。
ここ北海道の日高町は馬産地で、牛馬問わずたくさんの牧場があります。そしてそこでたくさんの猫が暮らしています。猫たちは牧場で働く方々の癒しの存在でありながら、ネズミを追い払う仕事をしたり、SNSでバズってアイドルのようになったりと大忙しです。今回はそのような日高の牧場で暮らす猫たちにスポットを当ててみたいと思います。
執筆者 獣医師 野村 弓圭里(のむら ゆかり)るぼんず 院長 1981年兵庫県で生まれ、2008年酪農学園大学獣医学部を卒業し、2008年-2011年11月 神戸市内の動物病院勤務。結婚を機に日高町に移住。2児出産育児の間にオーガニックフード販売店のお客様相談員、ペット関連のWEB記事作成アルバイトを経験して、病院勤務時には気付きにくかったペットとご家族の悩みを知る。2016年るぼんずペット往診クリニック(現るぼんず)開設、ご紹介で地域猫の不妊手術とペットの往診を始める。苫小牧市の動物病院非常勤勤務。なんでも話せる隣の獣医さんのような存在でありたいと思っています。第66回比較統合医療学会学術大会「漢方薬により喉頭麻痺のコントロールが可能であった犬の1例」大会長賞。 |
外暮らしの猫たちの困りごと
普段は屋外にいる猫たちにとって、寄生虫感染はよくある困りごとの一つです。猫同士でうつるシラミ、野生動物が運んでくるダニ、シラミやネズミが原因の条虫など…予防できるものではありますが、予算や耐性の心配から状況に応じて薬を処方します。その子の状態にもよりますが、年に1、2回薬を使うだけでもうまく健康を維持できているようです。
猫エイズ(FIV)にも悩まされました。比較的若い年齢で免疫不全になり、亡くなってしまう子が続きました。少しずつ不妊手術が浸透しオス同士の血を見る争いが減ったのか、検査でFIV陽性が出ることが減りましたが、FIVキャリアの子も、免疫力の低下を早めにキャッチして対処してあげることが重要と考えます。
厳しい冬を乗り切る工夫
冬にはもちろん厳しい寒さが待っています。日高町の門別地区は太平洋側で、そこまで雪深くはないのですが、それでも飲み水は凍るし小さな体は体温が奪われてしまいます。そこで休憩室で暖を取れるようにしたり、飲み水が凍らないようにする工夫がされています。この飲み水が凍らない工夫は病気の予防としてもとても重要で、現地で診察することで私のほうが勉強になることもあります。こうして寒さ対策を取ることで数々の冬を乗り越え、18歳現役でネズミ取りができるような猫たちも存在しています。ちなみに凍傷やしもやけになってしまった猫に出会ったことはまだありません。
たとえ敷地が広かったとしても、交通事故に遭ってしまう子が一定数いるのも現実です。やはり伴侶動物である猫は室内で生活が基本ということは念頭に置きつつ、みんながみんな完全室内でというわけにいかない中でも、できるだけ彼らの健康を維持できるよう、これからも往診で手助けしていきたいと考えています。馬や牛と同様に牧場の猫にも往診という手段があることを、生産者の方々にも喜んでいただいているようです。
編集部より
MyBESTieeが制作・編集をさせていただいている、往診獣医師協会様の情報誌「Cerca」から野村先生のコラムをご紹介させていただきました。
18歳現役でネズミ取りをする猫たち、往診の先生と牧場のみなさんの連携されたケアがあってこそですね。往診の地域ごと、暮らしごとの最適なケアや対策を、実際の状況を見て一緒に考えてくださるのは往診の先生ならではのこと。些細なことでも、お近くの往診獣医師にご相談いただければと思います。
「Cerca」は3ヶ月ごとに会員獣医師の先生方によるコラムを中心に、飼い主様にとって有益な情報をお届けしております。
先生方による直接配布に加え、宿泊施設やカフェ、トリミングサロン等、順次設置先を拡大しておりますので、お手に取っていただけたらうれしいです。
往診獣医師協会様のホームページでは、往診専門動物病院の検索や、おうち看護の工夫など役立つ情報が掲載されていますので、すぐに往診治療を必要とされていない飼い主様もご参考になさっていただければと思います。
執筆/野村弓圭里先生(るぼんず院長) 編集/MyBESTiee編集部 |
MyBESTieeは愛犬と飼い主さんの「うれしい!」を考え抜いたバラエティあふれるアイテムをお届けします。
愛犬の誕生日を特別な一日に!
MyBESTieeではパーティーを彩る室内装飾やファッション、プレゼントとなるおやつやおもちゃ、愛犬へのメッセージが入れられるスペシャルなケーキや思い出をカタチに残すアイテムまで
愛犬と飼い主さんに「うれしい!」をお届けします